【ここからつづく】
クリスマスの連休を利用して訪れたニューメキシコは、まさに魅惑の地だった。
ニューメキシコの玄関口アルバカーキ空港でレンタカーを拾い、高速で2時間北にあるサンタフェに向かう。アルバカーキ自体海抜1600mの高さにある町で、空港に降り立ったときひんやりした空気に出迎えられたが、サンタフェはさらに500m高い高原にあり、近づくにつれ道路脇に残雪が現れ始めた。
午後早くサンタフェについて、まず町の中心にあるプラザに向かった。ニューメキシコの町や村落の中心にはたいてい公共の広場プラザと教会がある。16世紀にメキシコ経由で訪れたカソリック宣教団が築いた村落の名残だ。サンタフェのプラザでは寒々とした枯れ木と芝を覆う雪が冬の情景を効果的に演出していた。風があるわけでもないのにとにかく空気が冷たく、手をポケット突っ込んで歩かないと凍えてしまう。子供時代の寒かった日本の冬を思い出し、またロサンゼルスの温暖な冬のありがたみが身にしみた。
近くにあるサン・フランシスコ・デ・アシス聖堂に立ち寄ると、ちょうどクリスマスの昼のミサの最中だった。この教会はニューメキシコ州と隣のアリゾナ州の一部を傘下にもつサンタフェ教区の頂点に立つ存在で、2005年にはローマ法王から世界に1500弱しかないバジリカ(司教座聖堂)という有難いステイタスを与えられたそうだ。
この教会は見てのとおり、期待していたスパニッシュ風建築ではない。それもそのはず、1626年に最初に建てられた教会の跡に1886年に建てられた「近代」建築だそうで、美しい建物ではあるが、ちょっと予想外のゴチック様式である。
街をうろつこうと思ったら、クリスマスだけあってさすがの観光地もほぼ完璧に休日モウドで、そこそこ訪れている観光客も一様にアトラクションを求めて彷徨っている様子だ。たまたま開いていたカフェテリアからいい香りが漂ってくると俄かに腹が減っているのを思い出し、そこで軽い昼食をとることにした。
大きな祝日に開いている軽食店の庶民的な雰囲気を見て、あまり期待せず今日の当店おすすめ、えび入りケサディア(チーズを挟んで焼いたトルティヤ)とトルティア・スープのコンボを頼んだが、これが驚き!両手離しでうまかった。一緒に頼んだコーヒーもまったく申し分なく、到着一時間でいきなりサンタフェの外食業界の底力を見せ付けられてしまった。
店だけでなく美術館も露店も全滅状態のサンタフェ散策をあきらめ、今日の予定にはなかったが北のタオスに向かうことにした。サンタフェから北に向かう高速は、ロサンゼルスの交通に慣れた僕には呆気ないほどガランとしていた。魅惑の地には、ストレスは無縁なようだ。
まず目指したのは、昔写真でその鄙びた佇まいを見てから、じかに見ることをずっと楽しみにしていたサンチュアリオ・デ・チマヨ(チマヨ寺院)。サンタフェから走ってきた主要道路からそれて細い田舎道を進むこと10分、こんなところにあるのか、と訝るような素朴な風景のなかに、その寺院は僕が見た写真そのままの姿で建っていた。冬の今だから狭い駐車場に何とか車を停めることができたが、この山奥の小さな教会は年間30万人の敬虔な信者が訪れる全米屈指の巡礼地なのである。
伝説によると、17世紀はじめのあるイースターの週に光る山腹を掘るとそこから十字架が見つかった。最寄の教会に預けても気がつくと同じ場所に戻っていたという。これはありがたや、とその地に建てられた礼拝所がチマヨ寺院の前身だそうだ。この教会から自由に持ち帰れる「奇跡の土」は身体の患部に擦ると病が治るといわれており、建物のなかには歩けるようになった?人々が残していった松葉杖がたくさん残されていた。僕らには今のところ治したい病はないが、念のため持参のジップロックに土を分けてもらった。
念願のチマヨを訪問後、そのまま北に向かい、世界遺産に指定されているタオス・プエブロに向かった。プエブロとは、米国南西部のアメリカ原住民たちの伝統的村落のことで、プエブロには典型的にアドビ(天日乾の煉瓦)と壁土で建てられた建物がある。
この日はたまたまタオス・プエブロの祝祭の日に当たったらしく入場料は免除だったが、入り口で写真撮影は一切禁止と念を押されてしまった。1000年の歴史を持つプエブロの広場ではバファロウや鹿など動物の面をかぶった半裸の男たちが素朴な音頭に合わせて儀式を行っていた。分厚い上着を着ていても寒さがこたえる空気のなか、伝統とはいえ少々気の毒である。プエブロの入り口近くには美しい古いスパニッシュ様式の教会もあり、いずれも写真に収めて読者の皆さんにご紹介できないのが心残りだ。プエブロの出入口で交通整理にあたっていたお巡りさんに頼み込んだら、なんとか入り口の看板前の記念撮影だけは許してくれた。あいにく夕日の反射で看板の文字は見えないが、はるか右奥の茶色の建物がその世界遺産のプエブロ建築である。これじゃわかんないか。残念ながらこの辺で夕闇が迫る時間になり、もう少し見たいものはあったがサンタフェに引き返すことにした。
サンタフェに着いたころにはとっぷり日は沈み、寒さにひときわ鋭さが加わっていた。街中で建物の屋根という屋根にファロリトと呼ばれるサンタフェ名物のクリスマス装飾が灯されていた。ファロリトは別名ルミナリアとも呼ばれ、幼いイエスの精霊を導くため伝統的にクリスマスイブに灯される。簡単に言えば、紙袋に砂の重しを入れロウソクを灯したものだが、厳しい冬の気候のなか、最近はやりの青白いLEDライトに比べてなんと温かみのある装飾だろう。あまりに気に入ったので、来年のクリスマスには我が家でも飾ろうと思っている。
ホテルの部屋に入ると、大きな暖炉が部屋を暖めていてくれた。凍えるような外気から戻ってきて、これほどありがたいものはない。しばらく暖をとってから街に夕食に出かけた。徒歩10分以内の距離だがこの寒さではもはや歩く気も起こらず、予約したプラザ近くのレストランまで車で出かけた。
値段の割に期待ほどではなかったサンタフェ料理の夕食後、昼間あれほど殺風景だったプラザを通りがかると、そこは夢の国さながらの情景に変わっていた。見る人がほとんどいないのはもったいない限りだが、僕らだけのために飾ってあると思えば寒さも気にならない。
【ここにつづく】
こんばんは( ̄(エ) ̄)ノ雪のサンタフェか~、宮沢さん寒かったろうに。あ、季節が違うか…。それはさておき、やっぱりクリスマスは教会巡りがよいですね~。「奇跡の土」って、日本でいう「とげぬき地蔵」みたいなものと考えてよろしいでしょうか?ファロリト、素朴な装飾ながらすごく温かみがあってよいですね~、写真からも伝わってきます。
お久しぶりです。お正月、娘へのお年玉をF母様から受け取りました。どうもありがとうございました ^^こないだ明け方まで起きてて、その時間になると日本をはじめ、世界の天気予報をひたすら繰り返してる番組がある。それをじーっと観てたけど、ロスの過ごしやすそうな気温におどろいた。ランチ、おしいそう。一緒に付いてるのはスープかしら?ツーショットの写真は誰かに撮ってもらったの?なんか、シルエットがそんなかんじだから。^^またもマイナスイメージ想像やけど、海外で異国の人にシャッター押して♪ってカメラを渡したらそのまま持って逃げられそうなイメージがあってコワイ・・・。^^;byともやん
このナンバープレートを見て寒いところのなんて信じられないのですが。。それにトルティアもつめた~~く冷やしたビールと一緒だとおいしそうだし。ところで、教会、とくにチマヨ寺院、すてきですね。サンタフェのホテルも素敵。なんかエキゾチックで。ところで、こちらではアリゾナのセドナってところが話題になってます。セドナもこんなふうにエキゾチック場所なのかなあなんてMarkさんのご旅行記を拝見してて思ったりしてます。なんでもビックサンダーマウンテンみたいな岩があるらしいんですが。
≫森のくまさんこの季節なら宮沢さん鳥肌間違いなしです。鳥肌じゃすまないか。おととしおつき合いいただいたサンフランシスコの教会も俄信者の信心を鼓舞する荘厳な雰囲気でしたが、ニューメキシコで訪問した教会は素朴で野蛮な未開地での布教活動の原点に触れたような気がしました。読んだところでは、中南米では奇蹟の土を食べたりするそうですが、ここではもっぱら患部に擦るだけでOKなので、初心者にはもってこいだと思いました。土をすくうため置いてあった砂遊び用の小さなスコップが教会の雰囲気にまるで不釣り合いで、とても面白く思いました。
≫ともやんしっかり投資して将来に備えてあげてください。という程のお年玉ならよかったんですが。来年は頑張ります。ロサンゼルスはたぶん過ごしやすさでは世界で5本の指に入るのではないでしょうか。あとの4本がどこになるかは知りませんが、一年中半袖ポロシャツで歩ける所はそうざらにないと思います。プエブロ看板の写真は村の住人の申し出で取ってもらいました。確かにどこの国でも都会で不用意にカメラを人に渡すとそのままトンズラされてしまう恐れがありますので、相手をよく見極めることが肝要です。その点、素朴なニューメキシコではそういう心配はほとんど不要でした。やっぱりいいなあ、ニューメキシコ。
≫うまこさん僕らもニューメキシコのライセンスを見るたび、暖かい土地という印象を描いていたんですが、今回はしっかり現実を教わってきました。チマヨ教会は、昔写真で見たときなぜか僕のツボにはまった建物で、風雪に耐え忍びました!という鄙びた佇まいは、じっと眺めているだけでも飽きない味がありました。冬枯れの時期に行ったのもよかったのかもしれません。そうそう、別の旅行サイトで急にセドナに関する質問がたくさん入るようになった時期があったので、たぶんTVか何かで話題になったのかな、と思っていました。僕らは過去2度ほど行きましたが、サンタフェよりさらに色が鮮やかで自然が美しいところです。サンタフェが観光化・商業化され、それを厭った芸術家たちが移った先だそうです。もしよければ⇒ http://marktanaka.spaces.live.com/blog/cns%2185DA3E175D8C1F9D%21200.entry
こんばんは。サンタフェ、よさげな雰囲気ですね。もっと大きな写真で見たい、そう思わせる風景建物ばかりのようですね。教会の明るさにサンタフェらしさを感じるのは私だけでしょうか?
≫しまやんさんサンタフェはやはり春から秋の間に行けばはるかに快適な気候を楽しめると思います。ただし、人気の観光地なので観光シーズンには混雑と高値を覚悟しないといけないでしょう。僕は写真でしか見たことがなかったファロリトが見たかったのと、雑踏は苦手なのでまあよい時期を選んだことになります。ご指摘のとおり、サンタフェの教会は欧州系のドラマチックな雰囲気というよりは明るい素朴なものが多かったように思います。今回はクリスマス期ということもあり、教会三昧をしてきました。どうぞお楽しみに!
本当にすばらしい建築物がたくさんあるところだったんですね!そんなに歴史が古いとはまったく知りませんでした。ニューメキシコといえばMarkさんの大好きな In Plane Sightですよね(私も好きです)。ホテルの暖炉がとってもいいですね!暖炉付のホテルに泊まってみたくなりました。
おお、ベタですみませんが少しだけホワイトクリスマスですね!本当に寒そうです!!でも、素敵!!!ライセンスプレートが洒落てますね。ホテルの暖炉もいいですね。ところで、セドナですが、同じ国とはいえ3千キロ以上離れた私ですら、行った事があるかどうか聞かれてビックリしました!歌手のA室さんが大物芸人Tさんと一緒に旅行されたそうですよ。昨年俳優Iさんと婚約したゴルファーのH尾さんと同じ母校なのですが、そちらはまだ誰も聞いてくれません…(笑)
≫utaさんニューメキシコのおもしろいところは、アメリカ原住民の素朴な文化とスペイン人がもたらした西洋文化が融合した独特の文化が息づいているのを目の当たりに体験できることです。後に出てきますが、ある小さなプエブロの丘の上にある教会では原住民のアーティストが教会の世話役をしており、僕らのようにふらっと教会を訪れる観光客を相手に村と教会の歴史や原住民の生活について話してくれたり、寂びの風情ある縦笛の演奏をして聞かせてくれたり文化が見事に一体化していました。そうそう、ニューメキシコにいったおまけの目的はメアリーの連邦保安官事務所が入っている(想定の)ビルをアルバカーキで見ることでした。現地にいって、いかにあの番組がニューメキシコの雰囲気をよく表現しているかよくわかりました。
≫Yukoさんホワイトでしたよ。これからどんどん白が出てきます。家内にいわせるとスキー場の寒さ程度らしいですが、華氏零度がどのくらい寒いか体験できたのは貴重でした。そうか~安muroちゃんがセドナにきたのか~。それは話題騒然だ!僕自身はすっかり彼女の存在を忘れてました。当分セドナはハワイのように日本人でいっぱいになりそうですね。