【ここからつづく】
ニューメキシコには16~17世紀に植民化と布教のためメキシコ経由でここを訪れたスペイン人の影響が今日まで色濃く残っている。その顕著な例は、数多いスペイン語の地名のほか、いまも住民の3割が話すスペイン語である。これは同じくスペインの植民地だったカリフォルニアと共通の特徴だが、いずれの州も公式書類は英語、スペイン語両語で発行されることになっている。これに加えて、集落ごとに立つ古いミッション教会はスペイン人がもたらした貴重な遺産といえるだろう。
ニューメキシコでの3日目の朝、まずホテル近くにあるサンチュアリオ・デ・グアダルーペ(グアダルーペ寺院)に散歩に出かけた。ここのグアダルーペ寺院は18世紀終わり頃に建てられた教会で、グアダルーペの聖母を祀る教会のなかで米国一古いものだそうだ。いまは米国南西部を代表する1793年の油彩画をはじめ、サンタフェ大司教管区が蒐集した宗教的美術品を展示する美術館になっているらしいが、早すぎたせいかまだドアは閉まっていた。
グアダルーペの聖母というのは、1531年、いまのメキシコシティ郊外に聖母マリアが現れキリスト教に改宗した原住民の農夫に教会の建立を命じたとき、男のマントに浮かび出た聖母像(写真手前の聖母像がそのイメージ)のことを指す。聖母像が現れたマントはバチカンが公式に奇跡と認めており、いまもその地に建てられたグアダルーペ教会で公開されている。メキシコの本家グアダルーペ教会はカソリック界最大の巡礼地となっているそうだ。
美術品ギャラリーが多く集まるキャニオン・ロウドを突き当たりまで行ったところにあるクリスト・レイ教会は1940年に建てられた比較的新しい建物だが、アドビで建てられたもののうち全米最大の教会だそうだ。僕らが訪れたときは、ちょうど日曜の礼拝に地元の教徒さんたちが集まり始めた頃で、みんな僕たちに穏やかな笑顔を投げかけて次々と教会の中に入っていった。
初日に立ち寄ったタオスをもう少しゆっくり見てみたかったので、3日目の今日は別の予定を変更してもう一度タオスに向かうことにした。上の写真は、サンタフェのすぐ北の高速沿いにあるキャメル・ロック。今回は時間に余裕があったので高速を降りて間近に見にいったが、予想通り座るラクダににている岩にすぎなかった。雪の上の足跡を見ると、結構たくさんの人が僕らと同じように騙されて?高速を降りて来たようだった。
高速と交差する道路の陸橋にユニークなデザインが描いてある。いくつか通り過ぎてから気がついたが、陸橋に書いてある文字は通過中の原住民居住区の現地語の名前のようだった。ちなみに、Posuwaegehという現地名は、昔のスペイン人の耳にはPojoaque(ポワケ)と聞こえたようだ。アメリカ原住民の部族が多いニューメキシコらしい面白いアイデア。
タオスのすぐ手前のランチョス・デ・タオスという村落にサンフランシスコ・デ・アシス教会という200年物のアドビ作りの教会がある。あまり広くない教会の周辺には日曜の礼拝に集まった車がぎっしり停まっていて、駐車場所というよりむしろ身動きする隙間すら見つけることすら大変だった。このあたりにも敬虔な人が多いらしい。無理矢理車を停めて教会の周りを歩いてみた。
教会の名になっている聖フランシスコというのは12世紀イタリア・アッシジ生まれの聖人で、新世界の布教活動に多くの宣教師たちを派遣したフランシスコ修道会の創設者である。北カリフォルニアの大都市もこの聖人にちなんだ命名で、同名の教会(1776年建立)がある。普遍の愛と無私無欲に目覚め、現代の今日に至るまで多くの信奉者に慕われる彼の生涯は、1960年代のフラワーチルドレン文化に重ね合わせた「Brother Sun Sister Moon」(1972)という美しい映画に描かれた。なお、ここのサン・フランシスコ教会は、ジョージア・オキーフやアンセル・アダムズが作品の題材にした教会としても有名らしく、「初期スペイン人が残したもので一番美しい建物の一つ」といったジョージアさんの言葉が残っている。全く同感。
タオス・プエブロへ向かう道からちょっと脇道にそれたタルパという小さな集落の、道路沿いにある鄙びたサン・フアン・デ・ロス・ラゴス教会に立ち寄ってから、タオス・プエブロに向かった。今回はゆっくり中を見て歩ける日であることを祈りながら。
【ここにつづく】
こんばんは( ̄(エ) ̄)ノグアダルーペの聖母像、大きいなあ~。近所で大きいものっていったら、鎌倉の大仏ぐらいしかないからなあ。大仏はさておき、教会には歴史がたっぷりあるから、飽きないですね~。いいなあ、教会巡り!日本で教会巡りってのも難しいので、とりあえず暖かくなったら寺巡りでもしようかな、などと思っちゃいました。
≫森のくまさんあはは、これじゃ、まるでウルトラの母のでかさですね~。実は教会がミニチュアだったりして。いやそんなことはないんですけどね。等身大です。朝早くからひとりのおばさんが聖母像の前に跪いて延々とお礼を述べていました。よほどマリア様にお世話になったようでした。ニューメキシコにいって、古い教会の渋さに開眼したようです。土壁を見るとつい反応するようになっています。カリフォルニアにも20ばかり古いミッションがあるので、まだ訪れていないのを見に行こうと決意しました。
等身大ってことはこのマリア様、仏像みたいなものですね。・・・と気軽に言ってしまったあとでばちが当らないかとちょっと気にする小心者の私です。どの教会もこういう言い方をするのもどうかとおもいますが、とってもかわいらしい建物ですね。こういう建物、日本の結婚式場なんかで作ってそうですけど、やっぱり本物には本物の厳粛さみたいなものが漂っていていいなあと思います。私も寺巡り、いこうかな。
≫うまこさん同じ人類の安寧を願う同業のお二人ですから、バチが当たることはないかと思います。カリフォルニアの地名にもよく出てくるグアダルーペってどういうことだろうと前から思っていたのですがキリスト教のメジャーな奇跡が起こったっと知った以上いつかメキシコシティの本家でその奇跡のマントを見てみたいと思います。現代ではどんな建物でも自在に建てる技術があるので、こんな素朴な建物など似せて作ることなどたやすいことでしょうがさすが歴史には勝てません。時がどんなものでも本物にしてしまうのですね。日本の結婚式場も100年もてば、そのころには立派な歴史建造物扱いです。どれだけ悪趣味でも…。